11月半ば、僕は彼女の両親と病院側に許可をとって、夜に深空を連れ出した。
と言っても、連れ出したのは病院の中庭で、僕は寒くないよう深空にダウンを着せ、車椅子にはブランケットを二枚設置した。

「今日はなんのイベント?」

深空はとぼけて聞いたけれど、僕は彼女の母親から聞いていた。
深空は今日がしし座流星群の降る日だとニュースで知っている。そして、僕に誘われた時からワクワクしていると。

僕もとぼけて、真面目に答える。

「今日はしし座流星群を見ようと思って。深空は流れ星を見たことがある?」

深空は寒さと高揚で頬を赤くし、ぷるぷると首を左右に振る。
嬉しくて楽しみで待ちきれないといった様子だ。

「毎年来るんだけどね。今年は大当たりの年なんだって。何百個も星が降るらしいよ」

説明しながら、ふと頭に渡の言葉が過った。


『流れ星がたくさん降るってこと?地球終わるの?』


しし座流星群の話をしたら、渡はそんなことを言ったっけ。

僕が実家に誘うと、『そんな先のことはわからない』なんて断った。
本当だ。
あの時は当たり前に並んで流れ星を見られると思っていたのに、ここに渡はもういないのだ。