「この前19歳になったばっかりなんだ。渡は?」

「同い年だ。八月で19」

「田舎から出てきて一人暮らし。こっちってなんでもあるのな。娯楽多すぎて、毎日遊んでばっかの馬鹿大学生だよ」

「大学入ってんだから頭は悪くないだろ」

「入るまでは勉強するけどね。渡は学生?」

「アルバイター」

渡は、ふっと皮肉げに笑った。

「高校も中退してるし、俺、すっげ頭悪いよ」

どうやら自分を卑下したい様子だけれど、手元の派手なパフェでその雰囲気が台無しだ。
ちょっと面倒くさいタイプの男かな、と思いながら、そんな気難しさも興味を引いた。
僕はもう一本のスプーンで、反対側からパフェを突き崩す。

「ちょっと、あんたが食べるなら、全部やるよ」

渡がパフェグラスをずずいと押してくるので、空いた左手で押し返す。

「いいじゃん、一緒に食おうよ」

「カップルか……やっぱりあんたそっちの趣味の……」

「違うわ、自意識過剰か!」

きちんと怒鳴り返すと、渡の頬が緩んだ。自分の冗談に、僕が突っ込みを入れたことが面白かったようだ。
ああ、なるほど適度に距離は詰めた方がお互い楽なんだな。

図書館で会うちょっと変わった男。そうだ、ちょっと踏み込んでみよう。