「よし、今日も行くか」
「え?」
「森」
意外な言葉に、わたしはぶんぶんと首を横に振る。
「だめだよ。ノア、風邪ひいてんのに」
「へーき、へーき。寝たら治った。てか風邪じゃないし」
「雪積もってて寒いってば」
「大丈夫だよ。ほら」
そう言ってノアは突然、見覚えのある奇妙な動きを始めた。
腕を曲げたり伸ばしたり、足を開いたり閉じたり。どこかで見たことのあるこの動きは――わかった、ラジオ体操だ。
「な。元気だろ?」
って屈伸しながらドヤ顔されても。しかも、ところどころ順番を間違ってるし。
半分あきれ顔のわたしを気にも留めず、ノアはでたらめなラジオ体操を披露する。
……そういえば、とわたしは突然思い出した。
子どもの頃は毎朝、リビングでわたしもラジオ体操をしてたっけ。小一の夏休みから始まったその習慣は、四年生になる頃まで続いたのだ。