「てか、なんでこんなもん持ってきたんだ?」
「わたしが環に頼んだの。新幹線の中でみんなで見たら楽しいかなーと思って」
それは、中学時代にわたしのカメラで撮った写真だった。ざっと数えて五十枚近くはあるだろうか。
わたしの中学はスマホ類の持ち込みが禁止だったので、昔ながらの使い捨てカメラで写真を撮るのが一時期流行ったのだ。
「環、ショートヘアだったんだね。似合ってる。ね、雄大くん?」
「うん」
ほとんど無理やり美那子に同意させられる雄大くん。そんなに気を遣わないでください、とわたしは申し訳ない気持ちになる。
美那子たちが写真に夢中になっているので、手持ち無沙汰なわたしも改めて写真を見返した。
翼とおそろいの赤いハチマキを額に巻いているのは、中一の体育祭の写真だろう。
ださいジャージ姿でレンゲ畑を歩いているのは、中二の春の遠足だ。
それから夏休み、勉強会、何気ない教室の日常……
アナログの写真には独特の温かみがあり、そこに写るわたしや翼の顔は、今より少し幼い。
そして、今より少しは幸せだったんだ。少なくとも、わたしは。
家の中が居心地悪くても、学校に行けば翼がいた。自分の居場所は翼の隣に、ちゃんとあったから。