一番右側を歩く翼のとなりに、ごく自然に美那子がおさまる。そして彼女を間にはさんで、一番左がわたし。
……いつからだろう。三人でいるとき、この並び順が多くなったのは。
最初は「あれ?」と思う程度だったのが、だんだん無視できない頻度になっていって。
そしてつい先日、「翼と付き合い始めたの」と幸せいっぱいに美那子が宣言して以来、この並びは至極当然のものになった。
そう、つまりこの状況こそが、わたしが逃げ出したくなっている原因なのだ。
「N県、寒いんだろうなー」
「こないだ買った服、ちゃんと持ってきたか?」
「もちろん」
会話を弾ませる二人から、わたしは少し離れて歩く。
こんなときは、自分のことを畑のカカシだと思い込むことにしている。ただそこに立っているだけの、感情がない存在。
顔は“へのへのもへじ”が書いてあるやつがいい。嫉妬とか孤独とか余計なものが滲み出ない、無機質なあの表情がいい。
「翼のコートも、あのとき買ったやつだよね」
「ああ、温くていいんだ、これ」
最近は、この状況にも多少慣れてきた。
自分と翼の間に美那子がいることも。
休日にわたし抜きで二人が出かけることも。
わたしの知らない話題を二人が共有することも。
嫌でも目にする光景なのだから、いちいち傷つくより慣れる方が楽だった。
そうしてわたしは少しずつ、あきらめることに慣れていく。
この胸の痛みにも慣れる日が、いつか来るのを待ちながら――。
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