「あの家はおじいちゃんの死後、わたしが引き継いだの。だからこれからは、時々みんなで遊びに行きましょう。ノアも喜ぶはずよ」


お母さんの言葉に、わたしは静かにうなずいた。

うん、そうだね。また行こう。ノアのお墓がある場所に、おじいちゃんが愛した葵の花を植えよう。

それはきっと、とても美しく咲き誇るはずだ。


  ***


――そして、わたしは今。少しの緊張を感じながら、受話器を握っている。

お母さんが横から番号を押してくれてると、プップッと電子音が続いたあと、先方につながった。


『もしもし。長瀬です』


六年ぶりに聞いた、ほがらかなその声には、かすかに聞き覚えがあった。


「突然すみません。小林 葵の娘の、環です。わかりますか?」

『えっ! 環ちゃんって、あの環ちゃん!? まああ、どうしたの?』