「ノア!」


窓も閉めずに部屋を飛び出した。

けたたましい音をたてながら階段を走り下りる。近所迷惑だとかそんなことは、考える余裕もなかった。

ノアが、帰ってきた! 本当に帰ってきてくれたんだ……!

興奮で手が震え、玄関の鍵チェーンを解くのに手間取ってしまう。心臓がはしゃぐように激しく鳴り、目尻にはすでに涙がにじんでいる。

ようやく玄関を開けたとき、ノアは十メートルほど先に立っていた。


「ノアっ……!」


夢中で駆け寄るわたしの目から、涙がこめかみの方へ飛んでいく。せわしなく吐き出す白い息が顔にかかる。

このまま抱きついてしまいたい。彼の温度を体中で感じたい。


けれどノアを目の前にするとさすがにそれは恥ずかしくて、わたしは彼の正面で立ち止まり、涙をぬぐった。


「よかった……ノア、本当によかった……」