もし、トモくんだけじゃなくノアにまで何かあったら……。

そこまで考えて、悪い想像を無理やり止めた。

信じよう。ノアは約束してくれたんだ。わたしに今できることは、彼を信じることだ。

そのとき、廊下からノックする音が響き、わたしは「はい」と返事をした。


「まだ起きてたのか、タマちゃん」


ドアを開けたのは、実里さんの旦那さんだった。この緊急事態のために旅行先から急きょ戻ってきたのだ。


「はい、心配で眠れなくて。実里さんの様子は?」

「ようやく寝てくれたよ。泣き疲れたんだろうな」


そう言う旦那さんの顔にも、疲労が色濃くにじんでいる。筋肉質でがっちりした体格の彼が、今はやけに小さく見えた。


「……わたしのせいでこんなことになって、本当にすみません」


わたしは唇をかみながら、うつむいた。

わざとじゃなかった。故意にトモくんをたきつけたわけじゃなかった。

でも、そんなのは言い訳でしかない。結果として招いてしまった事態が、これなのだ。