全身から血の気が引く。上下の歯がカチカチと鳴り、胃の腑から吐き気がこみ上げた。

立っていることすらできず、その場に崩れそうになったわたしを、二本の腕が背後から支えた。


「タマちゃん!」


頭の後ろで声がする。いつのまにかノアが追ってきていたらしい。

けれどわたしはふり返る余裕すらなく、体重をノアに預けたまま言葉をもらした。


「わたし、とんでもないことを……っ」

「何があった?」

「わたしのせいっ……わたしのせいで、トモくんが!」


呼吸がうまくできない。吸っているのに酸素が取りこめない。

こんなことしてる場合じゃないのに。早くトモくんを見つけなきゃ、早く、早く。


「タマちゃん、落ち着いて。男の子がいなくなったの?」

「わたしがっ、あんなこと言ったから、ひとりで森に……!」


酸素が足りなくて、金魚のように口をぱくぱくさせる。ひゅっ、ひゅっ、と喉がせわしなく音をたてる。