何故か気になって、彼の姿をじっと見た。


水を浴びたのか、日に焼けて少し茶色くなった髪が、少し濡れている。


楽しそうに、……本当に楽しそうに、彼は笑っていた。


その近くにいた男子が、彼を見て笑いながら口を開く。


彼らと私の間には一定の距離があるのに、その名前だけは、しっかりと耳に届いた。



「颯!」



ソウ。


やっぱり、聞いたことがない。


珍しい名前だと思うし、一度聞いたらきっと忘れないのに。



「…………………」



少し濡れた、体操服の半袖。


春の陽気には少し似合わない、白い肌。


……『それ』を見た瞬間、私は息をのんだ。



透明だ。



彼の白い肌や、やわらかそうな髪が、透けていた。うっすらとコンクリートの灰色が、彼の肌からのぞいている。