そんな自分に気づいて、ハッとする。彼のペースに巻き込まれて、絆されそうになっているのが悔しかった。


嬉々として廊下を歩き始めた橋倉くんの背中を見て、あ、と思い出した。



「は、橋倉くん」

「ん?」

「あの……さっき、橋倉くんのクラスの人が探してたよ。颯はどこだーって」

「あー……まあいいよ。今頃そいつらも諦めてるだろうし」



そう言って、橋倉くんは苦笑いした。


どうやら、橋倉くんが行方を眩ます常習犯だと、自覚しているらしい。


教室へ戻る様子が全くない彼を見て、本当についてくる気なんだとわかった。



………いくら絵を気に入ってくれたからって。



描いてる途中を見たいなんて、普通思わない。

みんな、あくまで完成された絵を見たがるはずだ。だってそこに価値があるんだから。


橋倉くんが何を考えているのか、全くわからない。


出会いだって、最悪だった。あのときの私の態度も、とてもじゃないけど良かったとは言い難い。