「……なんで…………」
橋倉くんが。
思わず、声が出た。彼は驚いた様子もなく、こちらへ振り返った。
目が合って、ビクッとする。そんな私を見て、彼は苦笑いを浮かべた。
「ここ、通るだろうなと思って。待ってた」
待ってた……?
驚いてなにも言えなくなった私に、橋倉くんは続けた。
「中野さん、これから部活?」
「……そうだけど、なんで知ってるの」
「……俺、この絵がすごい好きでさ。先生に聞いたら、中野理央さんが描いたって言われて知ったんだ。美術部員だっていうのも、そのとき聞いた」
中野さんと話してみたかった、と橋倉くんは言った。
……だから、私の名前を知っていたのか。
橋倉くんがあの絵を気に入ってくれていたなんて、知らなかった。