まるで、悪魔に魂を売るかのようだと思った。
弱った人のもとを訪れて、甘い誘惑と共に大事なものを奪い、ひとときの夢を見せる。
すべては夏の妖精の気まぐれ。
けれどその気まぐれに、少年はすべてをかけた。
たったひとり、恋した女の子に会うために。
「………ほんと、馬鹿みたいだ………」
颯の姿をしたそれを目の前にして、私の口からは笑いがこぼれた。
颯、今なら君の気持ちが痛いほどわかる。
ひとりぼっちは嫌で、だけどひとりではどうすることもできなくて。
すがりたくなってしまう。こんな馬鹿みたいな悪魔にだって、魂でもなんでも受け渡してしまいたくなる。
私は机の上に広げた絵の数々を見て、小さく笑った。
会えるのなら、なんでもいい。
それくらいの気持ちを、君は私に抱いてくれたんだね。
「なんでも、叶えてくれるの?」
問いかけると、妖精は静かに頷いた。