だけど綺麗な色を重ねれば重ねるほど、汚くなっていく。
上手くいかないことが悔しくて、どうしようもなくなって、筆を置いた。
そんなことを繰り返していると、絵を描くのも嫌になってきて、嫌になってきている自分が嫌で。
もう、どうしていいかわからなかった。
「なあなあ、颯がどこ行ったか知らねー?」
放課後、教室を出ると、ちょうど隣のクラスからそんな声が聞こえた。
「いや、知らねー」
「そっかー……はぁ、アイツたまにあるんだよなー。気づいたらいなくなってんの」
橋倉颯が行方不明らしい。しかも常習犯っぽい。
よく橋倉くんと一緒にいるところを見かけるその男子は、隣の教室のドア横に立って、ため息をついていた。
橋倉くんは、どうやら自由奔放なところがあるらしいと、眞子や他の人たちから聞いた。
彼は人気者で、色んなひとに好かれているけれど、他人を振り回すこともよくあると。