「なんでこんな……っ、せっかく会えたのに、思い出したのに、消えちゃうなんて」

「うん……俺も嫌だよ、すげーやだ。せっかく仲良くなれたのにな」


颯がそっと私を抱き締めた。


絡めた彼の指は冷たくて、白くて細くて、それが無性に泣きたくなった。


ふと見たらその指が透けていて、ハッとした。


消えてしまう。


本当に、目の前からいなくなってしまう。



「………楽しかったよ。二ヶ月」



頭上で、やさしい声がする。


涙が止まらなくて、必死に透けていく彼の指を握りしめた。


ねえ、消えないで、颯。


まだ春の香りを抱きしめていて。



「理央が教えてくれた場所に、ずっと行きたいって思ってた。理央と一緒に」



私を抱き締める彼の腕が緩んだ。顔をあげると、にじむ瞳の中に、颯の子供みたいな可愛い笑顔が映った。


人を幸せにする、明るい笑顔。




「会いたかった。だから会いに来た。………もう一度、この足で」




笑いながら、泣いていた。


彼の頬を涙が伝うのを、私は一瞬の美しさを追うように眺めていた。