颯はずっと、何かを考えているような難しい顔をしていた。


その顔を見ていると、これから行く先で何か良くないことが起こる予感が止まらなくて、泣きたくなった。



電車を降りて、また何も言わず歩き始めた颯の後ろをついていく。



彼の足は迷いがなかった。


その足が曲がり角を曲がるたび、私は一歩を進むのが怖くなった。


だって、これは。


この道は…………。



「ついた」



颯が立ち止まって、その建物を見上げる。


私はその横で、呆然としていた。


ところとごろ錆びた校門と、高く大きな白い建物。


私が通っていた、中学校ーー。



「………颯、ここ………」



なんで、颯がここを知っているんだ。


一瞬で頭がまっしろになって、だけどスケッチブックに中学校も描いていたことを思い出して、ハッとした。


カシャン、と音を立てて、閉じられた校門に颯が足をかける。


立ち止まったままの私を振り返って、颯はふいに笑った。



「どこまで思い出した?」



私は言葉を失う。


どこまで………。