私と颯は、まだ知り合って二ヶ月ほどだ。
だけど彼の目が私を見るとき、最初からあまりにも優しかった気がする。
…………何故?
「この世界にあるのが、自分の大事なものだけだったらよかったのにな」
彼の白いシャツが、町並みの灯りに照らされて、夜の闇に浮かび上がる。
「俺を中心に世界が回っててー、理央がその周りを回ってんの。幸せじゃない?」
颯のその言葉に、私は思わず顔をしかめた。
私は颯の周りを回らなきゃならないのか。やっぱり私は衛星程度なのか。
私の顔を見て、颯が面白そうにげらげら笑う。
颯の周りを回るなんて、今だけで充分だ。わざわざふたりだけの世界で、そんな関係にはなりたくない。