「俺、あのとき、『俺がいいって思ったもんはいい』って言ったよな。『俺が大事だって思ったものが世界一大事』って」


私はうん、と一言だけ相づちを打った。



「俺、ずっと『自分と自分の大切な人さえ幸せであればそれでいい』って思ってたんだ。俺の大事なものがいちばんで、周りの知らない奴のことなんか、関係ねえって思ってた」



懺悔するような颯の言葉に、ああ、と少し納得した。


彼はまっすぐだ。まっすぐに自分の世界を守ろうとする。


自分がみんなにとって太陽であることは、彼にとっては重要なことではない。


以前、他の生徒がいる中で私を呼んだこともあった。


『付き合っている』と周りに誤解されていると言っても、彼は『勘違いしてる奴にはさせておけばいい』と言った。



「周りに振り回されて苦労するのなんか嫌だったし、自分に関係ないとこでトラブルが起こっても、余計に心を割くのが嫌で、逃げてた。すぐ諦めてた」



悪いことをしているわけじゃない。


颯にとって、彼自身の心のエネルギーは、彼と彼の大切なもののために存在する。


ただただひたむきに、自分の世界を守ろうとしているだけだ。



私がまた「うん」と頷くと、颯は「でも」と言った。