近くに落ちている画板をちらっと見てから、「べつに」と言った。
「………絵を、描いてただけ」
心なしか、低くなった声。こんなに言いづらいのも、返事がそっけなくなってしまうのも、原因はわかっていた。
橋倉くんだからだ。
助けてもらったくせに、なんて感じ悪い奴だろう。きっと橋倉くんも、そう思ったはずだ。
わかっているくせに、反応が怖い。
私みたいな地味な人間なんて、橋倉くんは普段眼中にすら入れていないだろう。周りにあんなに華やかなひとたちがいるんだから。
風景画なんか、たぶん興味も示してくれない。
……完全に偏見だ。でもそういう目で見てくるひとが多いのを、私は知ってる。
地味な趣味だねって。
わかってるから、言わなくていいよ。
「………絵!?」
橋倉くんの大きな声に、思わずビクッと肩が揺れる。
そんな私を見て、彼は慌てたように「ちがう、ごめん」と謝ってきた。
………なんで謝るの。