ーーえ?
私の目に映ったのは、こちらを驚いた様子で見上げる男子の姿だった。
彼は、とっさに手を広げる。
私はどうすることもできず、まっさかさまにそこへ落ちた。
ーーードサッ。バサバサ………。
少し遅れて、画板やシャーペンが地面に落ちた音がした。
「…………………」
私はしばらく、何が起きたのかわからなかった。
目の前にあるのは、見慣れた白いシャツ。だけど平たく固い胸に、このひとが男なのだと実感した。
「………ってえ」
その声にハッとして、顔を上げる。彼が上半身を起こすと、私と目が合った。
白い肌、長いまつげ。綺麗な、顔立ち。
ーー橋倉 颯。
「………あ、ごめん、なさい」
彼のまっすぐな視線を向けられて、何故か声が震えた。