私は人の間を縫って、二年の教室がある廊下を何度も歩いて往復した。私よりも少し背の高い、華奢な背中を必死に探す。


だけど見つからない。


焦って、階段を駆け下りて一年の教室がある階まで行った。廊下から昇降口まで歩いて、再度探す。でも見つからない。


おととい彼が、突然目の前で消えたときの恐怖を思い出しそうになった。


すぐにぶんぶんと首を振る。彼は何も言わずにいなくなったりしない。


大丈夫、約束してくれたんだ。


だから、信じる。



諦めずに探そうと思い、振り返る。そして今まさに、二階への階段をあがっている途中の見覚えある学ランの背中を目にした瞬間、私は思うより先に口を開いた。



「颯！」



人目も気にせず、名前を呼んだ。


彼は立ち止まって、驚いた顔をして振り返る。彼の周りにいた男子たちも一緒に振り返って、私に気づいて目を見開いた。


だけど私は、颯だけを見つめ続けた。


彼はいつも、まっすぐに私を見つめてくれる。


私も、まっすぐでいたいと思ったから。