ぐちゃぐちゃで、いろんな色が入り交じった感情だ。決して綺麗な絵にはならない。


だからこそまっさらな颯に憧れた。


はず、だった。



颯の背中を一心に見つめる私を見て、眞子は不思議そうな顔をしながらも、質問に答えてくれた。



「……どうだろーねえ。でも橋倉くんは、結構いつも笑ってるよね。誰かとケンカしたとか、そういう話も聞かないし」



ああ、やっぱりそうなのか。


私の目に映る颯が特別なわけじゃない。颯は本当に、『いつも笑ってる』んだ。



「………そっか。わかった、ありがとう」



眞子は相変わらず納得のいかない顔をして、私を見ていた。






掃除の時間、ゴミ袋を抱えてゴミ収集の場所へ歩いていた。


校内はほうきやちりとりをもって掃除したりしゃべったりしている生徒で溢れており、その間を縫うように歩いて進む。


やがて人のいない収集場所にゴミ袋を置いて息をついたとき、近くから数人の男子の声がした。



「……それで、颯がさぁ…………」



颯?


その場に颯がいるのかと思ったが、どうやら違うようだ。


近いけれど私からは見えない位置にいるらしい彼らは、颯のいない場で颯の話をしていた。