『誰からも好かれてる人間なんて、いないよ』



颯は、知ってるの?そのことを。


いつも中心で笑って、みんなを笑顔にしている颯が。


無邪気で、純粋で、人間の薄暗い部分なんてちっとも知らないような、まっしろの彼が。


まっくろな絶望を、知っているの?



「……………」



すとん、と近くの椅子に座った。


おもむろに鞄から筆箱とノートを取り出す。私は無言でシャーペンを紙の上に走らせ始めた。



私が描く、颯。


記憶に残っている颯は、いつも笑っている。楽しそうに、ときに切なそうに。


ノートの上に描かれた颯は、快活に笑っていた。


………この、笑顔を。


彼はいつもどんな思いで、浮かべていたのだろう。