それから、その上にある太い枝へ腕をかける。そのままの勢いで登って、見えた景色に私は思わず感嘆の声を漏らした。
「わあ………」
木々の葉が生い茂る隙間から見える、ユニフォーム姿の男子たち。
遠くにはテニスコートがあって、そこに点々とテニスラケットを振る女子の姿があった。
なんていい景色なんだろう。
春のやわらかな日差しが、目にやさしい。自然と私の口もとに、笑みがこぼれた。
ああ描きたい。このあたたかな光景を、水彩絵の具で描きたい。
はやる気持ちを抑えて、バランスに気をつけながら枝の上に座る。首にかけた画板を持ち上げた。
それからは、夢中でシャーペンを動かした。