いいアングルの場所を探して、校舎と木々の間をウロウロする。グラウンドでは、手前に野球部、奥でテニス部が、それぞれに練習していた。
ここにいると、色んな音が聞こえてくる。
吹奏楽部が練習している管楽器の音色、バッドが野球ボールを打つときの、カキンという軽快な音、校舎の廊下を歩いている人たちの話し声。
隣で、さわさわと葉桜が揺れていた。
「………もっと上から見たいな」
ここからだと、どうしても人が重なって見える。それはそれでいいのだけれど、もう少し全体を見渡したいと思った。
「……………」
ちら、と横に連なる木々を見る。
迷いはあまりなかった。足はまっすぐに、いちばんグラウンドに近い木の方へ向かった。
画板のひもを首にかけて、筆箱からシャーペンを取り出した。
シャーペンを制服のポケットに入れると、トン、と足を木の幹につける。
ぐっと勢いをつけて、いちばん低い枝につかまった。そのまま足と腕に力を込めて、幹をよじ登る。なんとか低い枝に足を置くことができて、一息ついた。