いつのまにか風は止んでいて、私の鼻をすする音だけが、耳に入ってくる。


颯は目を伏せて、唇を噛んだ。


そして静かに、「消えてないよ」と言う。



「俺はずっと、理央の目の前にいたよ」

「嘘!!」



大声を出して否定した私を、颯は驚いた顔で見てくる。


なんだ、やっぱり私の目がおかしいっていうのか。


でも確かに、消えたんだ。私はこの目で見たんだ。


もう目の調子が悪いだなんて思えない。思わない。


颯がずっと私の目の前にいたんだとしても、確かにさっき颯の姿は、透明になっていた。



「颯は気づいてないのかもしれないけど、本当に消えたの!今までだって、身体の一部が透けてて、だけど颯は気づいてなくて、私……っ」

「……理央、ちょっと落ち着いて」

「落ち着けるわけないでしょ!?消えたんだよ、颯、わかってるの?自分の身体が消えたんだよ!」



いくら言っても、颯は困惑した顔をするだけだ。


だけどその目は私を疑うものではなくて、ただひたすらに困っているようだった。


辛そうな感情が表情に見え隠れするあたり、心当たりがあるのかもしれない。