聞けば聞くほど、橋倉颯という人がどれだけ人を惹き付けて、いつも人の中心で盛り上げていたかがわかった。


そんなひとを知らなかった自分が信じられなかったし、同時にまた別の原因でモヤモヤした。


この前の日本史の授業が、頭の中でよみがえる。



きっと橋倉くんのようなひとが、世界を動かすのだろうと思った。



いつも人々のまんなかで笑って、他人の心を動かしてしまう。


そういう、ひと。

私とは違う、世界を回す才能があるひと。



橋倉くんを見かける度、自分勝手に腹が立った。

彼はなにも悪くない。無邪気な笑顔で、他人をも笑顔にしているだけ。



これは嫉妬だと、自分でもわかった。



私にはない絶対的なものを持つ彼が、羨ましかったんだ。









五月中旬のある放課後、私は画板と筆記用具を持って、裏庭に立っていた。


ここから見える、グラウンドの景色を描くために。