それで思い出した。
──そっか、だからユウガオなんだ。
「儚い恋と……罪」
「なんだ、突然」
「いや、ユウガオの意味ですよ!もしかしたら凪くんは、りぃへの想いを花に込めて、庭に植えたのかなって!」
今の今まで忘れてたけど、思い出せてスッキリした。そんな私を、拓海先輩は難しい顔で見つめてくる。
「儚い恋と罪……」
呟く拓海先輩を見て、また呆れているのかも知れないと思った私は、先手を打つ事にする。
「くだらない妄想だとか、言わないで下さいよ?だってあんなに豪華な庭にどちらかというと庶民的なユウガオの花植えるだなんて、意味深じゃないですか!」
私の言葉に拓海先輩は目を見開くと、両手を膝にパンッと置いた。
「……そういう事か」
「え、拓海先輩、何かわかったんですか?」
「とりあえず、空の所へ行く」
拓海先輩は私の質問には答えず、立ち上がった。何がなんだかわからないまま、拓海先輩の後をついていく。
倉庫に戻ってくると柊さんの姿は無く、空くん一人だった。
「不足してるのは、鏡じゃなくてこの下の装飾だよ」
空くんが指さしたのは、鏡の縁についているガラスの薔薇の装飾だった。
「ここ、薔薇が左右対称なんだ。だからたぶんその薔薇の装飾が無いんだよ。一応鏡の方も確認してみたけど、足りない破片は無さそう」
空くんは鏡のだいたいを元の位置に戻していた。
──空くん、たった2時間でここまで……。
私がその手腕に驚いている間にも、空くんは淡々と拓海先輩に説明していく。
「その装飾が見つかれば鑑定できるね。まぁ、場所が分かればなんだけど……」
「それは恐らく、レオンが持ってるだろうな」
空くんに、拓海先輩は迷いなくそう言った。
「え、レオンですか!?」
「あいつ、キラキラした物が好きなんだろ。それに映像にも鑑定にも、レオンがなんらかの形で関わっていたのは確かだ」
「じゃあ、レオンを探せばいいって事ですね!」
「いや、探す必要はない、小屋に……」
拓海先輩がそう言いかけた時だった。バタンッと大きな音を立てて扉が閉まる。
「……え?」
突然の出来事に、私は頭が真っ白になる。嫌な予感がして、心臓がバクバクと激しく鳴った。