「……犯人は、確実に男だ」
「え……?」
どこかぼんやりと天井を仰ぎながら、拓海先輩がぽつりと呟く。何か、鑑定で見たのかもしれない、そう思った。
「鏡が割れた時、レオンが入ってきたのを心配してるところを見ると、内部の人間が……怪しい」
「そんな……」
拓海先輩の言葉に間があったのは、親友の私を気遣っての事だろう。拓海先輩は言葉こそ鋭いし、わかりずらいけれど優しいのだ。
「それに、誰かを救おうとしているみたいだった。鏡が割れて救われるのは……誰だ?それを願う人間こそが犯人だろうな」
なんだか、バラバラのピースを前にしてるみたい。今わかるすべての事柄に、どんな繋がりがあるのだろう。
「事件が起きたのは日曜日……待てよ」
「拓海先輩、どうかしたんですか?」
拓海先輩は言葉を途中で切ると、眉間にシワを寄せる。
「何かが引っかかる、大事なものを見落としている気がする」
拓海先輩はそう言って顎に手を当てると、すぐに何かに気づいたような顔で私を見た。
「なぜその日に、掃除係の文さんが映像に映ってるんだ?」
「え?」
拓海先輩はソファーに深く沈めていた体をがバリと起こす。膝の上に肘をつき、手を組むとそこに顎を乗せた。
「文さんは、膝を痛めているという理由で、土日を休みにしてもらっていたはずだ」
「……あ!」
なんて、初歩的な事に気付かなかったんだろう。そうだ、そもそも文さんは休みのはずで、邸にいるわけが無いのだ。