『これし――、無い……』

──男の声か……でも肝心な人が見えない。

ノイズも煩く、ここまで鑑定しにくいのは初めてだった。それを無理に見ようとしているせいなのか、頭痛までしてくる。

『おじ――を、救うため』

──バリンッ。

男はどうやら鏡を持ち上げて地面へと落としたみたいだった。その瞬間に鏡の破片が散る。

『いっ……切れたか』

映像は見えないが、声で怪我をした事がわかった。

『ワフッ』

『なっ、危な――、おい!!』

どうやら、さっきの犬……レオンが入ってきたみたいだ。心配しているあたり、ただの泥棒とは考えにくい。

──こいつは、誰だ?

『こ――は、――罪だ』

ノイズが増して耳鳴りがする。
そしてついに、ブチンッと映像が途絶えてしまった。