「……なんだ」

チラリと拓海先輩を見れば、体の芯から凍りそうなブリザード光線が返ってきた。

うん、好きになるなら目線で人を殺せない人がいい。切実にそう思う。

「それにしても、お嬢様が探偵を雇ってたとは知りませんでした」

「まぁ……お父さんのお得意様だからね」

「それだけ……ですか?」


凪くんの目は、りぃに何かを問い詰めるように、真っ直ぐだった。不安げな凪くんの声、気のせいだろうか、2人の空気が少しだけ暗くなった気がする。

「いえ、すみません忘れてください」

「凪……」

「探偵さん、もしかしたら犯人なんていないかもしれませんよ」

おかしくなった空気を変えるように、凪さんが明るい声でそう言う。今の間はなんだったのだろう。

気になるけれど、それよりももっと気になることがある。凪くんの言う、犯人がいないかもしれないって話だ。

「……どういう事だ」

クイッと片眉を持ち上げて、私が気になっていた事を拓海先輩が尋ねる。みんなの視線が、凪くんへ集まった。

「ここは、鏡が割れたり、変な声が聞こえたり、気味悪いことばかりが起きます。ひょっとしたら……なんて」

あ……そういえば今の今まで忘れてたけど、ここって怪奇現象起きてるって、りぃが言っていた場所じゃないか。