「あの、この人たちは?」

先ほど凪と呼ばれた男の子がおずおずと声を上げる。

「あ、この子が親友の来春で、拓海先輩と空くんは鏡の割れた理由を調べるために来てくれたの」

「鏡の……探偵かなにかですか?」

「ま、そんな感じ」

そんな感じって……説明するの面倒だったんだな、りぃ。

「えと、俺は如月 凪(きさらぎ なぎ)といいます。ここで、庭師をやってまして……」

「あ、じゃあもしかして、庭のユウガオも凪くんが?」

「あ……はい、俺が植えました」

凪くんは人見知りなのか、フイッと私から視線をそらして、気まずそうにそう答えた。

「やっぱり!あんな丁寧に手入れされてて、すごいなぁと思ってたんです!」


でもどうしてあんなに豪華な庭に、シンプルなユウガオを植えたんだろう。何か、特別な意味でもあるのだろうか。

ユウガオ……ユウガオの意味って何だったっけ。

「凪は私と同い年なの、たまにレオンの世話もしてくれてる。庭師としての腕は一流よ!」

ユウガオの意味を思い出そうとしているところに、りぃの自慢げな声が聞こえる。


「高校生なのに、庭師?」

「まだ見習いなんです、父の。父が吉高家の庭師でしたので、私も必然的にここで働かせていただいてます」

空くんの質問に凪くんが答えた。

「見習いだなんて、凪は優秀なのに!」

「ふふっ、お嬢様、ありがとうございます」

──あ、凪くんって、りぃの前ではあんなに自然に笑うんだ。

私の時は顔が強ばってたのに。それだけで、2人が心許しあっている仲だとわかる。

「お世辞じゃないんだからね!」

私はユウガオの事をさっぱり忘れて、やけにテンションの高いりぃに意識を持ってかれた。

これは女の勘ってやつだけど、りぃは凪くんの事が好きなのではないだろうか。

「お嬢様、俺はまだまだですよ」

「謙遜しないの!」

「ありがとうございます」

そういう凪くんも嬉しそうだ。

──なんだ、相思相愛かぁ。
いいな、私もいつか拓海先輩と……。

そう思ってすぐに、何を考えてるんだと私は我に返る。