「お嬢様?」
また、新しい人が現れた。
振り向けば、倉庫の入り口に作業着に軍手、エプロンを付けた私たちくらいの男の子が立っている。
「凪?どうしたの、こんな所に」
「レオンを探してまして……また、ここに来てないかと」
「また邸の中で遊んでるのね」
りぃがため息をついた。
「りぃ、レオンってまさか?」
「うちで飼ってるゴールデンレトリバー。来春はうちに来たことあるから知ってるよね」
覚えがある。あれは中学3年の時、髪ゴムについていたキラキラの花の飾りを噛み千切られた事件だ。しかもそのまま逃走し、未だに花飾りは見つかっていない。
「あの癖、相変わらず直ってないんだ」
「そうなの、あの子邸に忍び込んではキラキラしたものを見つけると小屋に持ち帰る癖があって、困っちゃう」
「可愛いじゃん、なんか」
「たまにならいいけど、商品にも平気で飛びかかるから。この倉庫にもよく侵入してたし」
「あはは……」
と、苦笑いを返す。
ご愁傷さまですとしか言いようがない。