「これは……ベネチアンミラーか」
「ベネチアンミラー?」
聞き返すと、そんなことも知らんのかと言わんばかりの顔で拓海先輩に見られた。
普通の女子高生は、拓海先輩ほどアンティークに詳しくないんだからね、全く。ここにりぃがいなかったら、絶対口に出してただろうな、この人。
「16世紀、ヨーロッパ各国で貴族や富豪を中心に大流行したガラス製品だ。職人の洗練された技術と、使用された海水や薪の炎、全ての工程が精密だからこそ、ベネチアンミラーは美しい」
「ほえぇ~」
なんだかよくわからないけど、とにかくすごい品物らしい。
「と、言っても……」
「へ?」
「お前はちんぷんかんぷん、なんだろうがな」
──バレてるけども、今の言い方は酷くない!?
何て事を言うんだと、怒りを通り越してあ然としながら拓海先輩を見つめる。
「ぷっ、仲がいいんですね」
そんな私たちのやりとりを見ていたりぃが吹き出した。「どこが」と私と拓海先輩の声が見事にハモる。