「柊(ひいらぎ)、鍵を」
「かしこまりました」
柊さんは吉高家の執事で、深海さんみたいな60歳くらいの老紳士。前に遊びに来た時も、何かと世話を妬いてくれた優しい人だ。
「鍵は、柊さんが管理してるんですか?」
拓海先輩が尋ねる。
「はい、この邸の全部屋の鍵は、私が管理しております。ですが、この倉庫に関しては掃除係の文さんだけがスペアキーを持っていますね」
「柊が邸を取り仕切ってるから、聞きたいことがあれば柊になんでも聞いてね」
執事がいたり、こういうのを見ると、りぃとは住む世界が違うんだなと感じる。だからって親友であることには変わりないけれど。
「ここが倉庫です」
真っ暗だった倉庫の中は、柊さんがカチッと電気をつけた事によって全貌を現す。
「ひえぇぇっ」
倉庫っていうより、例えるなら博物館みたいだ。
ガラスケースに厳重に保管されたインテリアが、一つ一つライトアップされていて美術品のよう。
そのスケールのでかさに、変な声が出た。



