「お前の友達、何者だよ」

「あはは……ちょっとしたお嬢様かな」

火曜日の祝日、お店を深海さんに任せた私たちはりぃの家へとやって来ていた。鏡が大きくて喫茶店に持ってこれないために、今回は出張鑑定という事になったのだ。

「ちょっとどころじゃなさそうだけど……。さっき庭に噴水あったよ?」

「うん、前に来た時は無かったから、新しく作ったのかも」

そして、割れた鏡のリペア依頼も入ったので、空くんも一緒だ。それにしても、りぃの家は何度来てもすごいなと感激する。本当にお嬢様って、豪邸に住んでるんだ。

「あ、もうユウガオが咲いてる」

私は庭にある小さな白い花を見て足を止めた。花は虫食い一つなく、丁寧に手入れされているのが見てわかった。

「ユウガオ?」

「うん、夏に咲くんだよ、この花」

「へぇ、来春って花とか詳しいんだ」

空くんに関心したように言われて、慌てて首を横に振る。

「花っていうか……昔から花言葉とか、そういうのに興味あって。だからユウガオの事も知ってたの」

「女って……なんでそういうくだらない事に時間を使うんだ」

「くだらないって、私の趣味を貶さないで下さいよ!」

馬鹿にする拓海先輩に、引きこもりだけには言われたくないと思った。

「来春!!」

広すぎる庭を抜け、ようやく玄関へたどり着くと、りぃが笑顔で駆け寄ってきた。


「りぃ!」

「来てくれてありがとう、それから皆さんも」

りぃが拓海先輩と空くんに頭を下げた。

「私は吉高 里衣子です」

「僕は平井 空です」

「……前野 拓海だ、さっそく依頼品を見せてくれ」

簡単な自己紹介を済ませ、私たちは邸の中、2階の倉庫へとやってくる。