「そうだ、拓海先輩!!」
「……急に大きな声を出すな」
げんなりしている拓海先輩の前に回り込んだ私は、両手を合わせて頭を下げた。
「お前……何してるんだ」
拓海先輩は腕を組むと、"俺の道を阻みやがって"みたいな抗議の視線を私に向けつつ、立ち止まる。
「お願いがあります!」
「断る」
「え、何でですか!?」
理由も話していないのに、即刻断られた。
「嫌な予感しかしない」
「酷い!さっき、助けてあげたじゃないですか!」
卑怯だとは思うが、こっちは先ほど修羅場に巻き込まれてやったのだ。
今度は、私を助けてくれてもいいじゃないか。
そんな私に反論できないのか、拓海先輩は「ぐっ」と小さく呻いて、諦めたように「話せ」と言った。
「助けてください、拓海先輩~っ!!」
一生のお願いを使う勢いで頼み込むと、拓海先輩は不審そうな顔をして。
「だから……なんなんだ」
と苛立つように言う。
しかも、”下らない事だったら容赦しないぞ”、というメッセージがこもった冷たい視線つきで。
そんな拓海先輩に私はビクビクしながら、りぃの話をしたのだった。