「じゃあ、私から頼んでみるよ!」

「ありがとう、来春」

親友のために、あのブリザードにお願いしに行こうじゃないか。そう意気込んで、パックのイチゴミルクジュースを飲みほした。


放課後、校舎を出ると目の前に拓海先輩の背中を見つけた。りぃの依頼の事を拓海先輩に相談しなきゃと思った私は、拓海先輩の事を追いかける。

「拓海せ……」

「ねぇ拓海っ、今帰り?」

声をかけようとした私のすぐ横を、颯爽と駆け抜けていく茶髪ロングの美人。

一瞬、『香りもオシャレに』というキャッチフレーズを謳っていたリンスのCMモデルの姿が頭に浮かぶ。

こんな風にキューティクル満点の髪をなびかせて、彼氏に駆け寄るシーンがあったな。しかも、横を通り過ぎる時、髪からなのかふわりと甘い匂いがした。

「……佐野(さの)」

──え。

あの誰にも興味ない拓海先輩が、名前を呼んだ。私だってまだ名前呼ばれた事ないのに。

親父にもぶたれたことないのに!並みの衝撃を受けた私はつい、呆然と立ち止まってしまう。