「でも、割られてたって、どういう事?泥棒にでも入られたの?」

「うちの商品は、防犯のために家の中にある、倉庫に入れてるんだ。それも、普通の部屋みたいにフェイクもかけてるし……」


何度も言うが、りぃの家は庭にもう3軒ほど家が建ってしまいそうな程に大きな豪邸だ。部屋数だって数え切れないほどあるし、遊びに行った時に迷子になりかけた事もあった。

「倉庫には鍵もかかってる。なにより、壊れた鏡は20kgもあるんだよ?」

「それ、男の人でも担いで素早く逃走するのは無理だよね」

家に入っても豪邸のような家の中、倉庫を探すのは難しい。ましてや鍵も開けて、重い鏡を抱えて……となると長い時間家の中にいる事になるし、かなりリスキーだ。

「ねぇ、そんな危険犯してまでうちに泥棒に入る?」

「そんな不審者がいたら、すぐに見つかっちゃうよね」

りぃの質問に、苦笑いで答える。

「そうなの!だから困ってて……。後ね、鏡が壊れてから、誰もいないはずの倉庫で、女の人の呻き声が聞こえたりするんだよねぇ……」

「え……マジ?」

「マジ、私も聞いたし……」

なにそのオカルト系の依頼。私、この手の類はかなり苦手なのに。

「なんにせよ、原因がわからないとお父さんの大事なお得意様に知れたら……信用を失っちゃう」

そっか……そうしたら、お父さんの大切な顧客が減ってしまう。こんな悩みを抱えていたなんて、気づいてあげられなかった自分が情けないな。

私は俯いてるりぃの手を、机の上でギュッと握った。