「大げさだな、来春は……。あ、でもそれならちょっと助けてほしいかも」
「なになに?」
「依頼、私もしていいかな?」
「え、りぃが!?」
りぃから体を離すと、りぃは苦笑いを浮かべていた。
「もう、神にもすがりたい気持ちでさ」
──神にもって……。
りぃに何があったのだろうか。
前向きで気が強いりぃからは想像できないくらいの困った顔。ただ事じゃない様子に私は姿勢を正し、席に座りなおした。
「うちってほら、インテリアショップでしょ?」
「あぁ、そうだったね」
そう、りぃの家はフランスやイギリスからアンティーク家具を買い付けて売るインテリアショップだ。
しかもお父さんは社長で、りぃはいわゆるお嬢様というヤツなのだ。
一度家に遊びに行った事もあり、私みたいな庶民が足を踏み入れるには、かなり敷居が高い豪邸に住んでいたのを思い出す。
「この間、お父さんがベネチアで壁掛けの大きな鏡を仕入れてきたんだけど……。その鏡が一昨日の日曜日に割られてて……」
「えっ!それウン百万……いや、それ以上するんじゃ……」
「まあね」
「ひぇぇ~っ」
高校生なんて到底手の届かない金額につい、悲鳴が出た。自分がそれを割ってたらと思うと……背筋が凍る。