「え、来春バイト始めたの?」

昼休み、親友、吉高 里衣子(よしたか りいこ)こと、りぃが驚きの声を上げる。私達は教室で席を向かい合わせて、お弁当を食べていた。

「うん、先月からね」

6月中旬、うっとおしい梅雨の真っ只中。
バイトを始めて一か月が経ったからか、なんとなく雰囲気やバイトにも慣れてきた。

「へー、どこで??」

「えっ……と、喫茶店」

「へー、いいじゃん、来春、カフェとかで働いてそうだもん」

「カフェ……ははっ。」

──お茶飲むところじゃないけどね。

と、乾いた笑みを浮かべる。 深海さんのおいしいコーヒーは依頼のオプションだなんて勿体ない。

「てか、なんでもっと早く教えてくんないわけ?」

ギクッとして、妙に背筋が伸びる。
いつもなら気にならない教室のざわめきが気になった。
クラス全員が私達の話に聞き耳を立てているような感じがして、本当に生きた心地がしない。

なんでって、理由は明白だ。
でも、ずっと話さないで隠し通すのは、いくらなんでも無理がある。それに、りぃは信頼出来る私の大事な親友だ。