「だったら、どこからどこまでが夢?」
「なに、意味わからないことを言ってるんだ……」
「拓海先輩のせいですよ!」
呆れた顔をする拓海先輩に、私はむくれる。そして、なんとなく断る理由も無いので、流れで公園へと入った。
公園の中央にある時計台。時刻は19時半をさしていた。頼りない街灯に公園全体が暗いせいか、子供たちや恋人たちの姿も無い。
世界に私と拓海先輩の2人だけしかいないような気になるなんて、そんなバカげた事を考える。
「今日、優輝くん達の笑顔が見られて良かったですね」
夜空を見上げたままそう言った。なんとなく、拓海先輩と二人きりなのが恥ずかしくなったからだ。
ベンチに腰掛けた私達は、人一人分、空いた距離に座っている。それでも、隣にいるってだけでなんだか胸が騒ぐんだから困る。
「俺は、お前の言う奇跡を見た気がした」
「え……?」
その意味を考えて、数時間前の会話を思い出す。
『拓海先輩の鑑定が、優輝くんにどんな奇跡を起こすのかを、ですよ!』
そうだ、私が言ったんだ。
拓海先輩のやっている事は、誰かを幸せにする素敵な仕事なんだって、伝えたくて出た言葉だった。