5
お店を出る頃には、空に星が煌いていた。
それをぼんやりと見上げていると「行くぞ」と数歩先で拓海先輩が私を振り返る。
「はい……」
それだけ答えて隣に並び、歩き出してもしばらく無言が続いた。初めて拓海先輩と喫茶店に2人きりにされた時の気まずさは無い。
今、私の胸を占めるのはさっきの出来事だった。切なくもあり、嬉しくもある。言い表せない想いに言葉を見つけられずにいた。すると、拓海先輩が急に立ち止まる。
「拓海先輩?」
「……寄っていかないか」
拓海先輩は目の前にある公園を指さして、そう言った。
「……へ?」
拓海先輩の誘いに、驚愕する。スケールにすると目の前に隕石が落ちてきたくらいの衝撃だ。
今、”あの”無口で人の事には無関心な”あの”拓海先輩が、私を公園に誘っている。
──あぁ、そうか。
私……立ったまま寝てるのか。
結果、その答えにたどり着いた。