「あなたは、こんなにも大きくなっていたのに……」
ここへ来て、初めてお母さんが笑った。
「ママも、優輝が大好きよ。たとえ同じ場所にいられなくても、この先もずっと……」
もう一度、離れた心が通い合う。途切れた絆の道が繋がる。これが拓海先輩の本当の力なのだ。
「優輝くん、工房を見ていくといい。美由紀も案内してあげたらどうだ?」
孝之さんが親子を笑顔で促す。
「僕、ママが人形作ってるところ見たい!」
「ふふっ、それなら作りかけのドールが中にいるから、見ていく?」
「うん!!」
楽しそうに話す優輝くんたちが、こっちを振り返った。
「ありがとう、お兄ちゃん、お姉ちゃん!!」
「っ……いや、俺は別に……」
驚いたような拓海先輩の顔に、ついくすっと笑ってしまう。口下手そうだし、感謝され慣れてないんだろうなと思った。
優輝くんの隣では、お母さんが頭を下げている。
そんな二人に見送られて、私たちは店を後にしたのだった。