「そして、孝之さんは私の夢を大切にしてくれてる……私の大切な人よ。私はこうして優輝を置き去りに、別の幸せを掴もうとしてるの。本当にごめんなさい……」
振り返らないつもりでも、過去はいつでも付き纏う。自分の決めた事への後悔が、ふとした瞬間に胸を絞め付けるのだ。
「ママ……僕は謝ってほしいわけじゃないよ」
優輝くんが、お母さんの手を躊躇いがちに握った。
「ゆ、優輝?」
「ママにも、守りたいものがあったんだね」
「っ……あなた、どうして……」
優輝くんの言葉に、お母さんは目を見張る。
「僕がもっと大きかったら、一緒にパパに言ったのにな。ママの夢を応援してあげてよって!」
優輝くんが笑顔で言ったその一言に、どれだけお母さんは救われただろう。静かにお母さんの目から涙が零れる。
もう、優輝くんの思い描く未来はきっと訪れない、だからこそこんなにも切ない。
「どこにいても、ママのことが僕は大好きだよ。ママの作った人形も大好き!」
「うぅっ……ごめんなさい、優輝。私はどこかで、子供は何も知らない方が幸せだって思い込んでたのね」
お母さんが優輝くんを抱きしめる。