「会いたくないのなら、なぜそのドールを残した」
「え……?」
「そのドールがアンティークドールにしては珍しい男である事、パイロット服を着せているところを見ると……。さしずめ、優輝がなりたい夢だと考えるのが妥当だ」
「っ……それは……」
拓海先輩の言葉に、お母さんの瞳が揺れる。
「傑作を息子に贈る理由なんて、たった一つだ」
お母さんが優輝くんを本当は大切に思っている事、拓海先輩が証明しようとしてくれている。
それが、嬉しくて堪らない。
「……だって、私に会う資格なんてないのよっ」
耐えきれなかったんだろう、声を震わせながらそう漏らした。この時初めて、お母さんの本音に触れられたような気がする。
「私は、あなた達よりこの仕事を選んだっ」
堰を切ったように、お母さんの想いが溢れた。
どうして優輝くんのお母さんは、優輝くんを引き取らなかったのだろう。
一般的な意見だけれど、こういうのってお母さんが引き取ることが多いんじゃないかな。
仕事を選んだって意味もまだハッキリしていないし、一体この家族に何があったのだろう。
「優輝には、知る権利があるはずだ」
「でも……」
戸惑っているお母さん。
拓海先輩はお母さんが自分を遠ざけた理由を知らない事が、どれほどの苦しみを連れてくるのか。
その相手ともう二度と言葉を交わせない事が、どんなに悲いのかを知っている。だからこそ、言うのだ。