「お待たせし……」

「ママ……?」

「え……優輝、なの?」

お互いがその存在に気付くと、言葉を失ったように無言で見つめ合っていた。

──あぁ、神様、どうか感動の再会になりますように。

祈るような気持ちでそう思った。

「ママ、会いに……来たんだ!」

「…………」

「会いたかった!!」

「……私は、会いたくなかった」

お母さんはそっぽを向いて、優輝くんを視界に入れないようにしているようだった。

……会いたくなかっただなんて、どうして?

思い描いていた結果とは違って、私も動揺する。

「もう、忘れるつもりだったのに、どうしてここに来たのよ!!」

「美由紀、どうかしたのか?」

「孝之さん……」

騒ぎを聞きつけたのか、また奥から見知らぬ男性が現れる。

「優輝くんの知り合い?」

小声で私が尋ねると、優輝くんはフルフルと首を横に振った。じゃあ、この人は誰なのだろうか。

「優輝……?まさか、君の息子さんか」

でも、向こうは優輝くんの事を知っているみたいだ。

「……孝之さん、えぇ、でももう私の子じゃない」

ズキンッと胸が痛んだ。優輝くんはきっと、この何倍も痛いはず。そう思うとやり切れない思いに駆られる。

「ママ、どうして……」

「……私は、孝之さんと新しい家族になったの。もう……戻れないのよ」

こんなはずじゃなかったのに。離婚してたって優輝くんのお母さんは一人だけなのに、どうしてただ会いたかったって、抱きしめてあげられないのだろう。