「拓海先輩の鑑定が、優輝くんにどんな奇跡を起こすのかを、ですよ!」
「…………」
しばしの沈黙。すると、拓海先輩は頭を掻いて部屋の中に入って行く。そして、目の前の扉がバタンッと無情にも閉まった。
「……え??」
状況に頭がついていけず、まぬけな声が出た。
──え、まさかまた引きこもった?
嘘、私また地雷を踏んでしまったのだろうか。
ハラハラしていると、ガチャッとまたすぐに扉が開く。部屋から出てきた拓海先輩の手には、薄手のコートがあった。
「あっ……」
──これってもしかして、もしかしなくても一緒に行ってくれるって事!?
落とされた気分がまた上がり、嬉しくなった私はニコニコしながら拓海先輩の顔を見上げる。
「どこかのお節介が、煩いからな」
拓海先輩がそう言って、観念したように上着を羽織る。
誰かを幸せにする、素敵な仕事。そう言った私の言葉を、拓海先輩が信じようとしてくれた事に、胸がジンとした。たったそれだけの事が、嬉しくてたまらない。
本日2回目だけど、もう駄目だ……泣く。
「ううっ」
「……お、おい、お前……」
堪えきれなかった想いが溢れて、ポロポロと目から零れ落ちる。そんな私を、拓海先輩が若干焦ったように視線を揺らがせて見下ろしてきた。
泣きながら、あ、これも見た事のない拓海先輩の顔だな、なんて考える。