「だからこそ、傍にいてほしかった」

「あ……お母さんに、ですよね」


確認するように尋ねると、拓海先輩は頷く。拓海先輩は誰とは言わなかったが、少し考えればわかる事だ。拓海先輩の全てを受け入れてくれる存在が、誰だったのか……それが答えなのだ。


「同じ力のあるあの人なら、俺の事を理解してくれると思っていたからな。でも、一番傍にいて欲しい時、俺は一人だった」

──そんな切なそうな顔をして……。
そっか、拓海先輩は寂しかったのだ。そしてなにより、自分を受け入れてくれる理解者を求めていた。

「だから俺は、この仕事が嫌いだ。でも、これしか取り柄もないしな、仕方なくやってきたんだよ」

拓海先輩は淡々と言う。でも、心の内できっと傷ついているのだ。自分を蔑むその言葉にさえ。

「でも私は……」

拓海先輩は、相変わらず感情を映さない瞳で私を見下ろした。その悲しい瞳を真っ直ぐに見つめ返す。

「やっぱり、拓海先輩のやってる事は、誰かを幸せにする素敵な仕事だと思います」

「懲りないな、お前も」

「だって……」

拓海先輩の話を聞いても、この考えは変わらない。むしろ知ってほしい。その力がどれだけ素晴らしいのかを。そこで、ある事を思いついた私は、拓海先輩に提案する事にした。

「あの、見に行きませんか?」

「……何をだ」

拓海先輩は、怪訝そうに私を見る。