「……話しにくい」

目が合うと、拓海先輩が気まずそうに視線を逸らしてそう言った。


「お前は、俺に誰かを幸せにする素敵な仕事をしてるのに……そう言ったな」

拓海先輩は話を変えるように切り出す。


「はい……」

拓海先輩の質問の真意はわからないまま、私は、ありのままの気持ちを伝えた。実際に、拓海先輩の力はすごい。人と人とを繋げる、素晴らしい力だと思った。


「だが俺は、今まで自分の仕事をそんな風に思った事は一度も無かった」

「え……」


じゃあどうして、鑑定士をやってるのだろう。そんな疑問が浮かぶ。でも今は、自分の気持ちを話そうとしてくれている拓海先輩の話を遮りたくなくて、黙って最後まで聞く事にした。


「物心ついたときから、俺にはこの訳のわからない力があった。当然、みんな持ってると思ってたし、友人に話した事もあった」

拓海先輩は深い闇をのぞき込んでいるかのように、表情も暗く、辛そうに眉を寄せている。きっと、その瞳を影らせてしまう程に人の心の汚い部分を見てきたのだろうと、なんとなく悟った。

「でも、返ってきた言葉はこうだ。俺は頭がおかしい、変な事を言っている、誰かの気を引きたいだけだってな」

「そんな、酷い……」

「だが、俺が普通じゃないのは事実で、これが世間の反応だ」


確かに私がもっと幼かったら、拓海先輩の力をこの目で見ていなかったら……。拓海先輩を傷つけた人達と同じで、ろくに真実を確かめもせず、信じようとはしなかったかもしれない。

拓海先輩が人を寄せ付けない理由がわかった気がした。拓海先輩は……自分は普通じゃないから、関わらないようにしよう、そうやってみんなとの間に線引きをしてしまったのだ。